コンピューターによる在庫管理 




 2013(平成25)年2月 消耗品などの、在庫管理運用開始 
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1 はじめに
 特養施設の経営は、益々厳しさを増しており、職員一人ひとりの気づきによる節約や、コスト意識の徹底が重要であり、全職員一丸となった取り組みが求められています。無駄の排除、支出会計の適正化など、業務課として取り組んできた、物品管理に関する改善の実践と成果、そして、これからの課題などについてまとめてみました。

2 取り組み
 当苑では、昭和53年の開設以来、現場職員による在庫管理が行われ、施設全体が、特養、ショート、デイサービス事業会計に区分されたものの、多くの使用する物品は、按分により費用が算出されていました。また、在庫管理のため、介護職員の負担も大きく、充分な管理には程遠いものでした。
 物品の購入は、各部署からの要望に基づいて行われ、一部物品の互換性が困難な状況にありました。また、同一法人内でも、事業別に使用する物品へのこだわりや、物品の貸し借りにも抵抗意識が高いように見受けられたのも事実です。
 そこで、法人内で使用する消耗品の管理一元化により、在庫量を少なくし、必要な場合は、速やかに発注できるシステムの構築が必要だと考えるに至りました。

(1)物品保管場所の確保
 大量の在庫が手付かずの状態であり、まず、何が、どこに、どれだけあるかを調査すると同時に、在庫スペース確保の場所の検討を行いました。「いつか、誰かが使うだろう」と保管されていた物品は、選別し、不要な物品は廃棄処分としました。

(2)デッドスペースの活用
 それまでの物品庫には、介護リフト、入浴関連用具、消耗品などが混在し、業者が納品すると、足の踏み場も無いほどの状況でした。
 そのため、まず、場所の多く占めていた入浴関連用具を別の所へ移動することに決めました。使用頻度の低い押入を移動先とし、そこの改造工事を実施。同時に使われていなかったロッカーを再利用することで、入浴作業の際にも使いやすくなるよう配慮しました。

(3)在庫品の棚設置
 従来から、品物を置くため、備え付けの棚と引き出しが設置されていましたが、物品の重さに耐えられず、破損している箇所もあり、修繕と仕切り改修工事を行うことで、在庫品を見やすく、整理し易い状態で管理出来るようにしました。

(4)在庫管理ソフトの活用
 手作業での在庫管理は困難なため、市販されている安価な在庫管理ソフトを購入し、活用することにしました。在庫管理ソフトで入出庫に関する処理を行い、棚卸しを実施することで、在庫切れなどを未然に防ぐと共に、過剰な在庫を減らし、適正な時期に発注処理を行うなどの在庫管理が可能となったのです。

3 コンピューター化への準備
(1)旧在庫品の整理
 在庫品をコンピューター管理するために行ったのは、保管されていた旧在庫品の把握でした。それまで、在庫品を統括して管理する職員が定められていなかったためか、雑然と置かれていた品物を、種類別に分別し、品名、数量等の確認を行いました。
 そして、保存されていた品物であっても、今後使用の可能性がないと判断した物は、関係職員の確認を得て廃棄処分としました。

(2)コード設定
 在庫品として管理することになったのは当初83点で、その後、103点に増えています。種類としては、@道具類A紙・袋類Bタオル・シーツ類C口・手類Dトイレ類E感染症類F入浴類G洗剤・消毒類の8種類でしたが、その後、Hゴミ関係類が加わり、現在は9種類となっています。それぞれの種類ごとにコードを設定し、品物は品名・型名等を確認しながら、個別にコードの設定を行っています。
 次ぎに取り組んだのは、発注に際し必要な、仕入先などの把握です。総務課に依頼し、過去の購入実績から、仕入先と購入単価などを調査。仕入れ先別にコードの設定を行い、購入単価は、コンピューターに登録。購入金額が不明だった品物については、単価を一律10円に設定して登録、その後、納品時に金額の変更を行いました。
 次いで行ったのは、品物を持ち出した課や係を把握するため、課・係コードの設定です。5課16係に、それぞれコードを設定。職員であれば、品物の持ち出しをすることはできますが、課別の支出実績把握が必要になると考え、入力要件へ加えることにしたのです。

(3)発注点(P)、発注量(Q)の設定
 次ぎに行ったのは、品物の発注点、発注量設定です。残数が何個になったら(P)、何個注文(Q)するかは、在庫管理上、非常に重要なことです。
 しかし、過去の入出庫詳細が不明だったため、発注点・発注量とも、感覚で決めざるを得ませんでした。開始時に定めた発注点・発注量でしたが、コンピューター化してから不都合が生じた品物も多く、入出庫実績などから判断し改正を行っています。

(4)入出庫用紙などの作成
 次いで、入出庫用紙の作成に取りかかりました。入出庫用紙は、A4サイズで、@品物コードA品物名称B発注点・発注量C発注先コード・発注先D棚Noが記載されており、所定の場所に、原則2枚ずつ設置されています。
 品物を持ち出す際、職員が記入しなければならない項目は、最小限の、@持ち出し月日、A所属・氏名B出庫数の3項目としました。
 また、管理担当者が、コンピューター入出力処理を行うため、一時的に用入出庫紙を持ち出すことがあります。担当者が用紙を持ち出している間は、用紙がないため、品物を取りに来た職員が記入できないという不都合が生じてしまいます。
 そのため、管理担当者が、入出庫用紙を持ち出している間でも、持ち出した品物の数などを記入できるよう、臨時用の用紙も作成しました。それには、@品物コードA品物名称B月日C所属・氏名D出庫数の5項目のみが印刷されているもので、通常は、管理者が保管しており、持ち出し者が記入する欄は、入出庫用紙と同じ内容になています。

(5)倉庫略図などの作成
 次いで行ったのは、品物を取り出すため、倉庫へ来た職員が、欲しい品物がどこにあるのかすぐ分かるよう、略図などの作成です。@倉庫全体棚略図A分類別棚場所B分類別在庫一覧表C用紙記入例などで、倉庫入り口に常備してあります。それを見れば、入出庫用紙の記入方法や、保管場所などが、不慣れな職員であっても分かるようになっています。  また、入出庫用紙は、品物の前に透明のビニール袋に入れて、コード順に保存されており、その全てに、コードと品名が表示されています。

(6)違う場所に保管されている場合など
 在庫の品物が、所定の場所以外に保管されている場合は、入出庫用紙が入っているビニール袋の中に、保管されている棚No等を記した用紙が入っており、用紙に記載されている棚から取り出せばいいことが、分かるようになています。
 また、発注している品物については、コード・品名・発注月日・発注数を記した用紙が、その品物のビニール袋の中に入っており、注文済みだということが分かるようになっています。

4 出庫の流れ
(1)商品を持ち出した職員が、入出庫記入用紙に記入
(2)管理担当者が、翌朝、出庫が発生した入出庫記入用紙を取り出す
  ア 取り出した後、臨時記入用紙を、その場所に入れる
(3)入出庫伝票に基づき、コンピューター入力処理
(4)入力済の確認印
  ア 入出庫用紙の、出庫数上に押印
(5)入出庫伝票記入欄がなくなった場合
  ア 新たに入出庫伝票を発行
  イ 記入欄がなくなった用紙を、所定の場所に保存
(6)コンピューター入力後、入出庫伝票を、元へ戻す
  ア 入出庫伝票を、倉庫内、元の場所へ戻す
  イ 臨時記入用紙を引き上げる
  (ア)臨時記入用紙に記入があった場合は、切り取り、入出庫伝票に貼る   (イ)臨時記入用紙を印刷し、所定の場所に保存する
 ※出庫は、平成25年4月〜平成26年1月迄の10か月間で、1,659件(月平均166件)

5 発注の流れ
(1)管理担当者が、入出庫伝票記載内容に基づき、コンピューターへ入力
(2)発注点(P)割り込んだ場合、画面へ、自動的に警告が表示
(3)発注入力処理
(4)入出庫伝票に必要事項を記入
(5)注文書・注文書(控)を印刷
  ア 注文書を総務課担当職員に届ける
  イ 注文書(控)を、所定の場所に保存する
(6)入出庫伝票を、元の場所へ戻す
  ア 発注していることが分かる用紙を、ビニール袋に入れる
 ※発注は、平成25年4月〜平成26年1月迄の10か月間で、239件(月平均24件)

6 入庫の流れ
(1)納品
(2)管理担当者が、発注している旨の用紙を取り出し、破棄
(3)先入れ、先出しになるよう、整理して保管
  ア 置ききれない場合
  (ア)商品名などを記入した用紙を、箱に貼る
  (イ)箱を、棚の上などに置く
  (ウ)置いた棚No等を記入した用紙を、ビニール袋の中に入れる
(4)入出庫伝票に、記入する
(5)管理担当者が、用紙を確認し、入庫記載があった場合
  ア 入出庫用紙を取り出す
  イ 取り出した後、臨時記入用紙を、ビニール袋の中に入れる
(6)入出庫伝票に基づき、コンピューターに入力する
(7)入力済の確認印
  ア 入出庫用紙の、入庫数上に押印
(8)入出庫伝票記入欄がなくなった場合
  ア 新規に入出庫伝票を発行
  イ 記入欄がなくなった用紙を、所定の場所に保存
(9)コンピューター入力後、入出庫伝票を、元へ戻す
  ア 入出庫伝票を、倉庫内、元の場所へ戻す
  イ 臨時記入用紙を引き上げる
  (ア)臨時記入用紙に記入があった場合は、切り取り、入出庫伝票に貼る
  (イ)臨時記入用紙を印刷し、所定の場所に保存する
 ※入庫は、平成25年4月〜平成26年1月迄の10か月間で、239件(月平均24件)

7 日常業務
 朝・夕の2回、倉庫内の確認を行っています。
 朝は、入出庫用紙を一枚ずつ見て、記入の有無を確認しています。記入があった場合は、コンピューターへの入力作業を行うことになります。
 夕方は、主立った品物について、目視による残数確認などを行っています。所定の棚に、残数が少なくなっていた場合は、別の保管場所から移動し、補充を行います。また、発注点を下回ったと判断した場合は、翌日を待たず、発注処理を行います。
 納品された品物の整理は、その都度行っており、先入れ・先出しが守られるよう、保管場所について並び替えなどを行っています。

8 棚卸し  毎月1回、全品の棚卸しを実施しています。
 まず、コンピューター上で、棚卸し月日を設定、棚卸し用紙を出力します。その棚卸し用紙に基づき、全品目の、実在個数をチェックします。コンピューターと実在庫の誤差発生品については、実在庫数をコンピューターに入力することで、棚卸し処理が完了することになります。
 棚卸し結果は、職員への周知と、意識付けのため電子会議室に掲載しています。
 棚卸し誤差の発生は、その多くが、数量記入ミスか、記入漏れのいずれかだと考えられ、数量記入ミスを防ぐため、間違えやすい品物の前に、注意事項を赤文字で記した用紙を貼付しています。
 棚卸しの結果、平成25年4月〜平成26年1月迄の10か月間で、計99品目に誤差が発生しました。月平均では10品目の誤差となり、全体の1割弱の品物で誤差が生じていることになります。誤差は、同一品に多く見受けられ、品物を持ち出す職員に対し、継続して注意を促すことが必要だと考えられます。

9 在庫品の金額等比較(数値は×印表示としています)

 年 月 日   平成25年4月30日   平成26年1月31日  増減   % 
在庫数(点)              ××               ×××  +         ×   ×××.×
在庫総点数(点)         ××,×××           ××,×××  △    ×,×××     ××.×
在庫金額(円)      ×,×××,×××          ×××,×××  △ ×××,×××     ××.×

 ※コンピューターよる在庫管理を行うことで、在庫総点数は、約×,×××点の減
 ※在庫金額では、約××万円の減額に

10 成果
 コンピューターによる在庫管理の結果、在庫品の欠品は、ほとんどなくなりました。それ以前は、品物がゼロになってから発注することもあったのですが、発注点を割り込むと自動的に警告が表示されることで、発注漏れをすることがなくなったのです。
 また、No.9に記載した在庫品の金額等比較で明らかなように、過剰な在庫がなくなったことも大きな成果の一つです。以前は、同一品が、重複して違う場所に保管されており、経費の無駄が生じていました。現在は、適正な在庫、適正な発注の管理が行われています。
 品物の保管場所が、誰にでも分かるようになったことも、その成果と考えられます。以前は、品物を探し出すのに時間がかかることもありましたが、今は、コード順に並べられ、略図等も整備されており、品物を簡単に見つけ出すことができるようになりました。

11 今後の課題
 発注点を減らすと、欠品になる可能性が出てきます。また、欠品をなくすため在庫数を増やすと、在庫金額が増加することになります。欠品を出さず、如何に適正在庫を持続させるか、それが、最も大きな課題だと考えられます。
 また、入出庫に関する担当者は、コンピューター化に取りんできた一人のみであり、休みが続くと入出庫業務が中断し、発注業務が滞り、欠品の可能性が生じます。そのため、兼務職員の育成などについて検討することも、急務だと思われます。


No.1と、No.2の文章は、他の職員が書いたものに、本波が一部手を加えました。
No.3〜No.11は、本波が書きました。






本波 隆(ほんなみ たかし)

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