_
2001(平成13)年6月 地域の公民館などを定期的に巡回し、映画を上映する「来て見てヤンバイ映画館」&「宇奈月ニュース」事業を開始しました。
全国社会福祉協議会発行の『ふれあいケア』で、「来て見てヤンバイ映画館」&「宇奈月ニュース」などについて、本波が記載したものが掲載されました。
----------------------------------------------------------------------------------------------------
2001年(平成13年)11月1(月)『ふれあいケア』 11 2001 全国社会福祉協議会発行
富山県 宇奈月町社会福祉協議会 事務局長 本波 隆
「来て見てヤンバイ映画館」!
宇奈月町社協では、高齢者が家の中で閉じこもらず、みんなで楽しい一時を過ごしてもらうことを目的に、平成13年6月から「来て見てヤンバイ映画館」事業を始めました。
懐かしい「巡回映画」の良さを見つめなおして
「来て見てヤンバイ映画館」の内容を端的に説明すると次の3つに集約できます。@懐かしい映画を地域の公民館などで、定期的に上映します。A参加は、地域の人ならだれでもできます。B家の中に閉じこもりがちな方も、みんなで楽しい一時を過ごせます。C介護予防、生きがい対策を考慮して企画しています。D笑って、泣いて、手をたたき、昔懐かしい「巡回映画」の感動を、地域で味わってもらいます。
高齢者の人たちが、昔、楽しみにしていた集まりは、お祭りや盆踊り。それら年中行事の他、心待ちにしていたものがあります。それは、学校や寺院で、年に何回か開催されていた「巡回映画」です。家族そろって出かける「巡回映画」は、だれもが楽しみにしていました。上映の1時間以上も前から、いい場所を確保するため会場へ足を運び、待ち時間に、顔見知りの人たちと話をするのも、また楽しみでした。あの時のように、映画を「種」にして、地域の高齢者などに集まってもらおうと考えたのが「来て見てヤンバイ映画館」です。
始まりは 視覚障害者の男性の一言から
宇奈月町社協では、「来て見てヤンバイ映画館」事業を開始する前から、寝たきりや重度障害者等の方へ「ふくし出前ビデオ」「望みかなえビデオ」というビデオサービスを行っています。
「ふくし出前ビデオ」とは、年中行事や施設などをビデオで撮影し、自宅で見てもらうサービス。「望みかなえビデオ」とは、希望に基づき見たい人や場所をビデオで撮影し、自宅まで届けるサービスです。
また、視覚障害者や寝たきり、一人暮らし老人の集いなどへの「聞いてみんけサービス」も実施してきました。このサービスは、聞きたい懐メロレコードなどを自宅や集い会場へ届け、楽しんでもらうものです。レコード、CD、カセットテープは「NHKボランティアネット」で募集。全国から22000点を超えるレコード盤などが集まっています。聞きたいと希望する曲のほとんどは網羅されており、利用者から喜ばれているサービスです。
しかし、サービスを開始した当初に比べ、在宅寝たきりの方などは減少してきました。そのため、これらのサービスを受ける人が、以前に比べて少なくなってきたのです。そこで、地域では、今どのようなサービスが求められているのか、あらためて訪問調査を実施しました。その際、「聞いてみんけサービス」を受けていたある視覚障害者の男性からヒントを得たのです。それは、「目が見えれば映画を見るのに」の一言でした。
高齢者は、映画を見る機会がほとんどありません。TVで放送される映画は、若い人のものばかり。ビデオをレンタルしてまで見ることはせず、映画館へ行くこともありません。懐かしい映画を昔のように地域で上映すれば、高齢者の方々が集まってくるだろうと考えたのです。
これまでのサービスを集大成
上映する映画は、高齢者が喜ぶような懐かしいものを準備。だれでも集まりやすい地域の公民館を巡回して、月2回定期的に開催。時間は、日中閉じこもりがちな高齢者の方々に出てきてもらうため、平日午後の開催としました。
映画を上映するだけでは、社協の姿が地域の人に見えてきません。そこで、映画の前に地域ニュースを上映することにしました。映画ニュースの宇奈月町版。名付けて「宇奈月ニュース」です。ビデオ撮影などについては「ふくし出前ビデオ」「望みかなえビデオ」で培ってきたノウハウがありました。「宇奈月ニュース」では、それを生かし地域に密着したレポートを紹介することにしたのです。
上映までの待ち時間は、「聞いてみんけサービス」で全国から集まった、懐メロのレコードを流します。このように、これまで、別々に行ってきたサービスを、「来て見てヤンバイ映画館」事業で、集大成することにしたのです。
この事業の目的の一つでもある「宇奈月ニュース」の撮影は職員が行い、レポーター役は地域の主婦がボランティアで協力しています。撮影後、職員がパソコンの編集ソフトを使って編集を行います。チラシやポスターも、職員がパソコンを使って作成しています。
上映当日は、会場の玄関に赤や青の幟(のぼり)を掲げ、はっぴを来た職員があらすじを書いたチラシを来場者に手渡します。時間になると、「来て見てヤンバイ映画館」事業について説明をし、その後「宇奈月ニュース」「次回映画予告編」、そして、「映画」を上映します。映画が終わると、参加した方へ次回開催予定についてお知らせをしています。
大きな反響、そしてこれから
開催したすべての会場で、私たちが予想していた以上の人数が集まっており、どの会場でも大きな笑い声や拍手が響いています。これまで、人口の7%近くが参加した地域もあります。男性の参加が、思った以上に多いことも意外なことでした。また、これまで、社協とはほとんど縁のなかった年代層の方が、数多く参加しているのも特徴です。
人が集まるには、理由があります。集まるような気持ちにさせる「種」を準備する。そのことを、あらためて実感しました。閉じこもりがちな人たちが、見たいと思う映画を用意する。そして、「宇奈月ニュース」で、宇奈月町社協らしさを出す。これが、当面の課題だと考えています。
「来て見てヤンバイ映画館」は、ボランティアを巻き込んだ事業として取り組むのが、最終目標です。映画を見に来る人と、事業の運営を行うボランティアが主役。そのような「来て見てヤンバイ映画館」に育つよう、これからも努力を重ねて行きたいと思っています。
※「ヤンバイ」とは、富山県東部地方の方言で「よかったね」「いいんばい」「いい具合」などの意味です。
----------------------------------------------------------------------------------------------------
巡回映画事業「来て見てヤンバイ映画館」&「宇奈月ニュース」のモデルなどはなく、本波が独自に考えて、取り組みを始めたものです。また、「ヤンバイ」と名付けたのも本波です。
|
|