「新おすそわけ」

本波 隆(ほんなみ たかし)が、2013(平成25)年1月23日〜4月26日迄このページのため、新たに書いたコラムです。総数365コラムになりましたので、一休みさせていただくことに。。。。


No.93(365) 「お返し」   2013(平成25)年4月26日
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 「ちょっこし、やけど」
 届けてもらったのは、手製の赤飯。
 あれは、何かのお祝いがあり、あそこの家で作ったものです。
 いつも、謙遜し、少しだと。
 ところが、毎回、多くの量。
 我が家の人数を計算し、全員食べても、まだ余分に。
 あの赤飯を作るため、何日も前から、準備をしたはず。
 夕ご飯の後、電灯の下で、収穫したアズキの選別。
 目をこすりながら、虫の喰ったものなどを、一粒ずつ。
 だから、使われたのは、いいアズキばかり。
 時間と、愛情を込めて作られた赤飯。おいしくないはずが。
 日が経っても、必ず、お返しを。それが、普段からの、おつきあいでした。
 もらいっぱなしは、ちょっと。そう、「ボランティア」。これまで、お世話になった地域社会へ、笑顔に優しさを添えて、いざ。



No.92(364) 「涙」   2013(平成25)年4月25日
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 あれは、兄弟げんかをした時のこと。
 肩にさわった、さわらないから始まり、髪の引っ張りあい。
 最後は、畳の倒れ、上から乗って、こぶしで頭を思いっきり。
 それを、見つけた家族が、止めに入り。
 「きかん子やね、何しとるが」
 叱られたのは、もちろん、上に乗っている方。
 「いつも、あんたやねか」
 今度のきっかけは、向こうが先に、叩いたせい。
 それを、いくら説明しても、聞いてもらえませんでした。
 普段の行いが悪いと、そんなものかも知れません。
 畳に倒れている兄弟は、大声を上げて、泣き続けています。 こちらの方は、下を向き、背中をふるわせ、悔し泣き。
 涙の出ることぐらい。そう、「ボランティア」。やれば、きっと、人の優しさに触れ、その感動で、涙がすーっと頬を。



No.91(363) 「寝息」   2013(平成25)年4月24日
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 いくら考えても、宿題が終わらず。
 「もう、おいた」。
 調べれば分かるはずなのに、それが面倒で。 自分の頭の中だけで考えても、なかなか。結局、分からずじまいでした。
 好きで、机に向かっている訳でなく、嫌々やっているから、あきらめの早いこと。
 夕ご飯の後、やることに決定。
 ところが、夕ご飯の後は、おもしろいテレビ番組があり、大笑いしながら、最後まで。
 テレビの後は、お風呂の番、上がると、もう眠くて眠くて。
 明日の朝、起きてやればいいからと、またまた、得意の後回し。
 布団に入ると、すぐ寝息。
 翌朝、もちろんやれるはず、がなく、頭を抱えながら学校へ。
 頭の痛くなることなんて、多分、ないかも。そう、「ボランティア」。やれば、きっと、心も、体も、すっきり爽やかに。



No.90(362) 「日影」   2013(平成25)年4月23日
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 日影に、腰をおろし。
 「どっこいしょ」。
 あまりの暑さに、額を流れる汗を、手で拭き。
 「あれ、ひどや」。
 どうやら、年寄りには、暑さが、こたえたよう。
 少し休んで、立ち上がりながら。
 「アイスでも、買うていこ」。 もちろん、大賛成でした。
 普段は、虫歯になるから、甘い物は食べるなと。
 でも、その日は、特別。
 お店の、大きな箱へ頭を突っ込むようにして、選んだのは、アズキのアイスキャンデー。
 あれは、アズキの粒々があり、大好きだったもの。
 冷たく、甘くて、おいしくて。
 食べながら歩くと、さっきの暑さは、どこへやら。
 いつも、簡単に涼しくなる訳では。でも、「ボランティア」。やれば、きっと、心に、涼しい風が吹き込んで爽やかな気分に。



No.89(361) 「失敗」   2013(平成25)年4月22日
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 「じき、こないだ、忘れられんて、言うたばかりやねか」。
 また、やってしまいました。そう、忘れ物。
 学校で、明日、必ず持って来て、と言われていたのに。
 朝、すっかり忘れ、昼休み時間、慌てて家へ取りに。
 つい、先日も、同じ失敗を。だから、家族から言われて当たり前。
 当たっているだけに、反論できず。その時は、素直に、ただ聞くだけ。
 学校へ戻る時、途中で出会った同級生のお母さん、けげんな顔をして。
 「どうしたがけ」。
 返事も、そこそこに、息を切らせて学校へ。
 授業開始の鐘の前、なんとか、間に合いましたっけ。
 人間ですから、忘れることだって。でも、「ボランティア」。やれば、きっと、人の優しさと、温かさが、心の中にしっかり。



No.88(360) 「鎌」   2013(平成25)年4月21日
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 学校が終わって帰ると、家は、空っぽ。
 みんな、もう田んぼへ行ってました。
 準備してあった服に、着替えです。汚れてもいい長袖。
 朝言われたように、早く田んぼへ、行かねばなりません。
 急ぎ足で、メモに書いてあった場所へ、向かいます。
 着くと、仕事の真っ最中。
 「早かったぜ」。
 「うん。すぐ来たもん」。
 鎌を渡され、早速、仕事開始。一緒に並んで、サクサク。
 でも、大人には、到底かなわず。隣にいた大人が、向こう側へ着いた時、こっちは、ようやく半分ほどしか。
 でも、後ろを振り向くと、自分のやった仕事が、目に見えて、はっきりと。
 子ども心に、やったなーって。
 目に見えるかどうかは、難しいかも。でも、「ボランティア」。やれば、きっと、普段味わえないような、達成感でいっぱいに。



No.87(359) 「ハエ取り紙」   2013(平成25)年4月20日
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 台所や居間などに、天井から、ぶらさがっていたのが、ハエ取り紙。
 あれは、ハエが、特に、多い場所でした。
 丸くて、小さな紙製の筒。外に出ているヒモを引っ張ると、中から黄色いテープ状のもの。
 すーっと、長く伸び、触らないよう、ゆっくり天井へ。
 とても粘着性があり、うっかり触ると、くっついて、大変なことに。
 だから、飛んでいるハエにとっては、最悪のもの。
 ハエ取り紙の両面は、日が経つにつれ、徐々に黒くなって。
 捨てる時には、何匹つかまったか、数え切れないくらい。
 あの頃に比べ、今、ハエの少なくなったこと。うるさいほどいたのに、いったい、どこへ行ったのやら。
 どこへ行っても大丈夫。そう、「ボランティア」。やれば、きっと、優しい笑顔がくっついて。



No.86(358) 「オモチャ」   2013(平成25)年4月19日
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 部屋の中を、声を上げながら、飛び回っていると。
 「あせぐらしいぞ」。
 あの日は、遠くの親戚が来ると聞き、ちょっと興奮気味。
 いつも、オモチャを持ってきてくれる人だから。
 しばらくして、玄関の戸を開ける音が。
 家族の後を追って、玄関へ。
 そこには、見覚えのある笑顔。見ると、手に、大きな紙袋。
 心の中で、ヤッターと。
 家族が、座敷へ案内。正座して、一人ずつ順番に頭を下げ、挨拶です。
 それが終わると、いよいよ横に置いた紙袋の中から、お土産。
 もらったオモチャの箱からは、都会の匂いが、漂ってくるようでした。
 ただ待っているだけでは、どうも。そう、「ボランティア」。やれば、きっと、心を打つような、新しい感動に出会えるかも。



No.85(357) 「褒め言葉」   2013(平成25)年4月18日
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 切った木の枝を、近くの山から、家まで背負ってきた時のこと。
 両手が、だらりと下がり、首が自然に、前の方へ。
 もう、すっかり疲れて、くたくたです。
 途中出会った年寄りが、背中の荷物を見て。
 「なんて、がいなが」
 言われた途端、背中が、しゃん。歩幅も、大きくなり、まるで、疲れてないような素振り。
 年寄りの姿が、見えなくなる所まで、元気そうにしてました。
 もういいかと、立ち止まり、緩んでいたヒモを、締め直し。 褒められると、ついつい頑張ってしまいます。それが、他人からだと余計。
 褒め言葉には、目に見えない、元気の素が、入っていたのかも。
 多分、目に見えないことが多いよう。でも、「ボランティア」。やれば、きっと、疲れなど、どこかへ吹き飛んで、幸せ気分に。






本波 隆(ほんなみ たかし)

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