「新おすそわけ」

本波 隆(ほんなみ たかし)が、2013(平成25)年1月23日から、このページのため、新たに書いたコラムです。さて、いつまで続くか。。。。


No.72(344) 「白カバン」   2013(平成25)年4月5日
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 中学生になると、持ったのは、白カバン。
 生地は、確か木綿製。
 カバーの部分は、雨が降っても濡れないよう、皮膜に覆われていました。
 肩ひもは、幅広く、長さが自由に調整できるように。
 カバンは、左の肩から、右の腰の方へ、斜め掛けです。
 ところが、上級生は、斜めにせず、肩から直接下の方へ。
 それが、とても、格好良く見えたもの。心の中で、いつか、私も、あんな風にと。
 カバンの中に、教科書等を入れると、ずっしり。念のため、あれもこれもと、入れたせいか。
 肩にかけると、重さで、体が斜めに、なるくらい。
 授業の初日、黒い帽子を目深にかぶり、肩から重い白カバンを下げ、いざ中学校へ。
 行けば、違う世界が。そう、「ボランティア」。やれば、きっと、新しい友人や知識を。



No.71(343) 「カッチン」   2013(平成25)年4月4日
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 さわると、歯が、少しグラグラ。
 あれは、乳歯から、永久歯へと、生え替わりの時期。
 動く歯が気になり、ついつい、指で。
 あの頃、飴やチョコレートなど、甘い物が大好き。どれだけでも、食べられました。
 そのためか、口の中は、虫歯が何本も。
 治療のため、歯医者さんへ行くと、「抜きましょう」って。
 ところが、抜く時、そんなに痛くなく、拍子抜けしたほど。
 あれなら、自分で出来るかもと、グラグラしている歯を前後に動かしている内に、ポロッ。
 とれたのは、上の歯なので、床下へ。下の歯は、屋根の上へ放り投げてました。
 あれには、どんな理由があったのでしょう。
 特に、理由など不要。そう、「ボランティア」。やれば、きっと、最後には、自分のために。



No.70(342) 「カッチン」   2013(平成25)年4月3日
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 スキー場までのリフトが、なかった時代のこと。
 スキー板を担ぎ、ストックを杖代わりにして長い坂を。 足元は、ゴム製の黒い長靴、頭には、手編みの毛糸帽子。
 30分以上かかって着いたスキー場、とても広く感じました。
 あちこちに、もう、先客が、たくさん。
 カッチンと呼んでた金具を長靴に止め、滑る準備です。
 滑り落ちないよう、横向きになり、一歩ずつ上の方へ。
 ある程度、登ったところで、スキーをハの字にし、ゆっくり下へ向かい。
 曲がる時は、膝を曲げ、体重移動です。
 頭の中では、うまくいってたのに、途中転んで、雪まみれ。
 ちっとも痛くなく、逆に、それが楽しくて。
 いつも楽しいことばかりでは。でも「ボランティア」。やれば、きっと心が雪のように真っ白に。



No.69(341) 「七草がゆ」   2013(平成25)年4月2日
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 お餅を、たくさん食べ過ぎたか。
 胃が、少々もたれてきていたよう。
 お正月は、普段と違い、食事が偏り、食べる時間も、不規則に。
 間食も多く、四六時中、口を動かしているような気さえ。
 以前より、体重の増えたのが、自分でも分かったくらいです。
 軽いものが欲しくなった頃、台所から、トントントンと、野菜を刻む音。
 食卓に出てきたのは、七草がゆ。七草と言っても、もちろん、七種類全部入っていた訳では。
 茶碗を手に持つと、春の香りが、プーンと鼻に。
 口にすると、体に優しそうな味が広がり、そのまま、すーっとお腹の中へ。
 お腹いっぱい食べるのは、そろそろ止めにしなければ。
 でも、止めるなんて。そう「ボランティア」。始めれば、きっと、優しい笑顔に会えるはず。



No.68(340) 「白黒写真」   2013(平成25)年4月1日
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 棚からアルバムを取り出し、パラパラと。
 ページの最初の方は、小さな白黒写真ばかり。
 大きさは、4センチ角ほど。いま見る、普通サイズの4分の1以下ぐらい。
 写真は、何十年も前のもの。色は、どれも、薄茶色に変わってました。
 子どもたちは、着物姿で、おすまし。
 全員正面を向かい、背筋を伸ばし、真面目な顔です。
 写真を撮る時、きちんとするのは、当然のこと。
 あの頃は、笑顔でVサインなんて、誰もいませんでした。  「はい、チーズ」、と言うようになったのは、カラー写真が、一般的になった頃からか。
 今、見ると、白黒写真だって、悪くないのですが。
 悪いことなど、絶対に。そう、「ボランティア」。やれば、きっと、笑顔の思い出が、心に。



No.67(339) 「絵はがき」   2013(平成25)年3月31日
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 旅行先でのお土産屋さん。
 手に取ったのは、セットになった、絵はがき。横に、1枚ずつのバラ売りも置いてありました。
 あれは、旅行の思い出になり、小遣いで買える値段。
 それに、写真が、とてもきれいで、色も鮮やか。
 まるで、実際より、写真の方が、いいかと思うくらい。
 気に入ったセットを買い求め、お土産に。
 持って帰ってから、家で、少々、大げさに説明。
 家族は、耳を澄ませ、真剣に聞き入ってましたっけ。
 終わると、絵はがきは、引き出しの奥へ。次に見たのは、何年か経った、引き出し整理の時。
 でも、どうしてだか、古くなっても、捨てられなくて。
 時には、捨てる勇気も必要か。
 そう、「ボランティア」。やれば、きっと、怠け心が消え、人を思いやる、純真で優しい心が復活。



No.66(338) 「かけや」   2013(平成25)年3月30日
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 家族に言われ、家の裏で、柵作り。
 持ってきたのが、納屋の奥に置いてあった、くい3本。
 「動かんよう、持っとって」。
 言われて、膝を曲げ、下の方を両手で持ち、支えます。
 かけやで、上から力いっぱい「ヨイショ」。
 すると、くいが、少しだけ地面の中へ。
 何度かたたいている内に、ぐらぐらしていたのが、びくとも。
 ところが、見ると、随分斜めに打ち込んでしまったよう。
 まっすぐに、しようとしたのに、もう無理でした。
 やり直しかと思ったら「ま。こんだけなら、いかろ」。
 打ったくいは、合計3本。3本目になると、すっかり慣れて、ちゃんと、まっすぐに。
 慣れるまでが、大変かも。でも、「ボランティア」。やれば、やるだけ、きっと、心に、少々のことには動じない柱が一本。



No.65(337) 「ナシ」   2013(平成25)年3月29日
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 大きな声で「いっぷく、しょー」。
 集まってきたのは、稲刈りをしていた、女の人たち。
 あれは、稲刈り鎌で、稲刈りをしていた時代のこと。
 親に言われたように、麦茶を湯飲みへ注ぎ、「どうぞ」って。
 「あれー、かたい子やねー」。
 言われると、照れて、顔が紅くなってましたっけ。
 次に、出したのが、皮をむいたナシ。みずみずしくて、器の中が、あっと言う間に空っぽ。
 他に、お菓子も。みんなと一緒だと、何を食べても、おいしく感じられたものです。
 食べながらのおしゃべりが、また楽しくて。笑い声が、周辺に響いてました。
 しばらく休んだ後、「さて、もう一頑張り」と、腰を。
 頑張るのもいいのですが、ほとほどに。そう、「ボランティア」。無理せずにやれば、きっと、多くのの笑顔に会えるかも。



No.64(336) 「あめんぼ」   2013(平成25)年3月28日
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 「魚とりに行こー」。
 出かけたのは、近くの小川です。
 水の流れが弱く、どんよりした所へ。
 家から持ってきた手拭いを広げ、二人で両端を。
 川の底から、すくい上げると、中には、めだかが数匹。
 最初にしては、上々の収穫で、二人顔を合わせ、にっこり。
 そこから、素早く逃げ出したのは、あめんぼ。
 長い手足で、水面をスイスイ。
 見ると、周りに、たくさんのあめんぼたち。
 どうして、水の上を歩けるのか、不思議で。あれは、多分、長い手足に秘密があったのかも。
 水遊びが楽しく夢中で、時間の経つのも、忘れてしまうほど。
 帰る時、シャツや半ズボンは、ビショビショでした。
 濡れた衣服は、しばらくすると、乾いて。そう、「ボランティア」。やれば、きっと、乾いた心に、しっとりうるおいが。



No.63(335) 「ぐみ」   2013(平成25)年3月27日
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 友達と、自転車に乗って河原へ。
 着くと、あたり一面、ぐみの木が。
 手当たり次第に、味見です。
 中には、渋い実。
 「ちゃー、なんて、渋いが」。
 ペッペッと、種と一緒にはき出すことも。
 そんなに、たくさん食べられないのに、熟れて、たわわに実った枝を、ポキッ。
 歩きながら、口の中がいっぱいになるまで、ほおばって。
 流れの近くに、砂場を見つけ、休憩場所に決定です。
 持ったぐみの枝を、荷物の上に置き、駆け足で水辺へ。
 遊び疲れて戻ってくると、ぐみは、しおれて、しなしな。
 食べずに、結局、そこへ捨ててきましたっけ。
 捨てるぐらいなら、最初から、持ってくるのは、いけません。
 一度やれば、気がつくかも。そう、「ボランティア」。やれば、きっと、心も体も、さわやかに。



No.62(334) 「カタツムリ」   2013(平成25)年3月26日
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 遊んでいて見つけたのは、カタツムリ。
 葉っぱの上で、小さな殻を背負い、ゆっくり動いて。
 飛び出た目に触れると、小さくなったり、大きくなったり。
 それがおもしろく、何度も、繰り返しやってましたっけ。
 次は、2匹で、競争させようと、大きな葉っぱの上へ。
 大きな声で「ヨーイ、ドン」。
 ところが、かけ声をかけても、まっすぐ進まず、くねくねと。結局、勝負にならず。
 見ると、葉っぱの上には、カタツムリの進んだ跡。
 どうしてだろうと、ひっくり返し、裏側をじろじろ。
 すぐ飽きて、元いた葉っぱの上へ。しばらくしたら、姿が消え、どこへ行ったのやら。
 今から考えれば、カタツムリには、いい迷惑だったろうなと。
 迷惑だなんて。そう、「ボランティア」。やれば、きっと、人間として、少し前進するかも。



No.61(333) 「アマガエル」   2013(平成25)年3月25日
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 「また、おったぜー」。
 言って掴んだのは、緑色した小さなカエル。
 お湯を入れる時、下を向くと、浴槽の底にカエルが一匹。
 あれは、開けていた風呂場の窓の隙間から入り、浴槽に落ちて、出られなくなったヤツ。
 湯船に下り、隅の方へ追い込み、両手で上から。すると、シッコで、手を汚された覚えが。
 あのカエル、風呂場近くにある、小さな池が、すみかだったようです。
 池の周りには、アジサイの木が何本も。その葉っぱに、白い泡のようなものが下がって。
 しばらくし、小指の先ほどの、可愛いカエルの姿を、見かけるようになったような気がします。
 時々、風呂場や台所の窓ガラスに、くっついている姿が。
 くっつきすぎるのもどうかと。そう、「ボランティア」。普段の生活から、ちょっと離れてやれば、きっと、大海を知ることに。






本波 隆(ほんなみ たかし)

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