「新おすそわけ」

本波 隆(ほんなみ たかし)が、2013(平成25)年1月23日から、このページのため、新たに書いたコラムです。さて、いつまで続くか。。。。


No.60(332) 「ウグイス」   2013(平成25)年3月24日
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 暖かい日差しに誘われ、小高い山へ。
 背中のリュックには、水筒、おにぎりとチョコレート。
 日影に雪が残り、少し寒いくらい。しかし、歩いているうちに、少し汗ばんできて。
 すると、木の上の方から「ケキョ、ケキョ」。
 どこにいるのか、見上げても、鳥の姿は見えません。
 でも、あれは、紛れもなく、ウグイスの声。
 私の口笛の方が、もっと上手だと思うほどの鳴き方でしたが。
 もしかすると、鳴き声の練習を、していたところだったか。
 耳を澄ますと、あちこちから、違う鳥の鳴き声も。
 山は、随分賑やかになっており、一足先に、春が来ていたようです。
 向こうから来るのを待つより、こちらから、先に動くのも。そう、「ボランティア」。やれば、きっと、心にさわやかな風が。



No.59(331) 「ねこやなぎ」   2013(平成25)年3月23日
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 雪どけの小川。周りの田んぼは、まだまだ真っ白。 川辺で、雪の間から、顔を出していたのは、細い枝。
 その先には、色が灰色。ふわふわで、丸くて細長いもの。
 そうそう、あれは、ねこやなぎ。
 手触りは、まるで、ベルベット。さわると心地よく、何度も、指でさわってました。
 それが気に入り、しまいに、枝を折り、手に持って、グルグル回しながらブラブラと。
 あれほ冷たかった空気が、なんだか暖かく感じられ、もう春だなって。
 でも、あの枝、家へ着く前、どこかへ、投げ捨ててしまったのですが。
 いけません。途中で、捨てるくらいなら、枝を折るなんて。
 やる前に、少しは考えることも必要か。そう、「ボランティア」。みんなで考え協力すれば、もっと楽しく、もっと笑顔に。



No.58(330) 「かまくら」   2013(平成25)年3月22日
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 自分の背丈より、少し大きいぐらいの、重いスコップを抱えて、家の裏へ。
 兄弟で作ったのが、かまくら。せっせと、雪を集め、上へ上へと積んでいきます。
 でも、時間が、かかった割りには、それほ大きくなくて。
 予定では、中で、ゆっくり、餅でも焼いて、食べようかと。
 ところが、出来上がったのは、子ども一人、中へ入るのが、やっと。餅を焼くなんて、とんでもない。
 だからか、結局、かまくらで遊んだのは、数えるほど。
 出来上がるまで、おしゃべりをしながら、作っていた時の方が、余程おもしろかったかも。
 世の中、そうそう、おもしろいことばかりでは。
 いえいえ、「ボランティア」。やれば、きっと、新たな体験に、毎回心の底から、笑顔の二重奏。



No.57(329) 「リンゴ箱」   2013(平成25)年3月21日
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 玄関先に、大きな木箱。 箱の中は、クッション代わりの、もみ殻とリンゴ。
 長持ちするよう、奥の寒い部屋へ保管してました。
 あれは、家に冷蔵庫なんて、なかった時代のこと。
 リンゴは、学校から帰ると、おやつ代わり。皮なんてむかず、そのまま、丸ごとガブッ。
 冷たいのが、おいしくて。
 あの頃は、力が有り余っていた年代。力を入れ、手で、真ん中から二つに割ったりして。
 木箱は、後で、いろんな物に活用してたものです。
 だから、納屋の奥には、古い箱が、いくつか。
 今は、ほとんど、ダンボール。家で、木箱を見かけることなんて、もう、すっかり。
 無くなった物は、他にもたくさんあるようで。
 いえいえ、「ボランティア」。やれば、きっと、無くしたと思ってた、優しい心が顔を出して。



No.56(328) 「塩鮭」   2013(平成25)年3月20日
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 遠くの親戚から届いたのは、大きくて細長い箱。
 開けると、魚が口を開け、一匹そのままの姿で。
 見ると、頭から、しっぽの先まで、塩まみれ。
 箱から取り出し、家の隅に、縄でぶら下げるのは、大人の役割でした。
 しばらくして、食卓へ出てきた鮭は、塩辛いのなんの。
 お陰で、ひと切れあると、ご飯がすすんで、すぐお代わり。
 弁当にも、少し強めの塩味が、ご飯にちょうど良くて。
 今は、塩分控え目の時代。だから、あの頃のような、塩辛い鮭に巡り会えることなど、めったに。
 味の好き嫌いがあっても、体のことを考えねばなりません。だから、少々、塩味が足りないぐらいは。
 ガマンなんて、無縁かも。そう、「ボランティア」。やりたいことを、やりたい時に、だから。



No.55(327) 「椿油」   2013(平成25)年3月19日
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 鏡台の前に置いてあった、小さな箱。
 箱の正面には、真っ赤な椿の絵。
 あれは、家族が、出かける時に使っていた整髪料。
 鏡の前で、油を手にとり、手のひらでこすり合わせて髪に。
 髪の毛を、クシでとかし、何度も顔の向きを変え、横目でじーっと鏡を。
 次は、丸い手鏡を後ろにかざし、それを、正面の鏡に映して、手直し。
 しばらくしてから、一人で頷き、にっこり笑って「うん」。
 見ると、髪の形が、見違えるようにすっきり。色も、黒くてツヤツヤ。
 やはり、手ぐしだけとは、大違い。あれは、まぎれもなく、整髪料のお陰でした。
 きれいになるためなら、少しぐらいの努力を。
 いえいえ。少しなんてダメ。そう、「ボランティア」。やればやるほど、きっと、笑顔の花が。



No.54(326) 「とろませ」   2013(平成25)年3月18日
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 裏にあった、大きな渋柿の木。
 あれは、干し柿用、別に、うれたものだけを、熟し柿として。
 木から、軟らかくなった柿をつぶさないよう、手で1個ずつ、そーっと。
 それを、廊下に並べた新聞紙の上へ、順番に。
 熟すまで、何日も、そのままにしておきました。
 全体が、ぽたぽたになると、ちょうど食べ頃です。
 薄皮をむき、軟らかくなったのを、ガブッと一口。
 2個目に、手を伸ばしかけたら、奥の方から「とろませは、体冷えるさかい、一つだけにしられ」って。
 口の周りについた汚れを、袖で拭きながら、「わかったちゃ」。
 そう言いながら、実は、後で、家族に隠れてもう1個。
 隠れてなんて、とんでもない。そう、「ボランティア」。やる時は、笑顔と一緒に大手を振って。



No.53(325) 「もみ殻」   2013(平成25)年3月17日
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 田んぼの真ん中に、積み上げた、もみ殻の山。
 ズボンのポケットから、マッチを。その箱には、虎の絵が、書いてありましたっけ。
 持って来た、すんばを、まとめて、もみ殻の下の方へ。
 マッチで、すんばに火をつけると、パチパチと音を立てて。 いよいよ、準備してきたイモを、もみ殻の中に入れます。
 しばらく遊んで戻って来ると、香ばしい匂いが、あたり一面に。
 棒で、焼けたイモを探し出し、手に取ると、「アチッチッチ」。
 二度三度、息を吹きかけ、冷ましながら皮をむき、口の中へ。
 「何、それ」。声の方を向くと、口の周りが、炭でまっ黒。
 「ばーこそ、何」。二人して、口の周りの汚れを手でふきながら、大笑い。
 笑いが出るようになれば、本物かも。そう、「ボランティア」。やれば、きっと、優しい心に火がついて、充実感でいっぱいに。



No.52(324) 「台風」   2013(平成25)年3月16日
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 「心配やから、見に行こ」。
 あれは、台風が北上し、ラジオで、こちらへ向かう、と言ってた日。
 刈り取った稲を干していた、はさ木の確認です。
 倒れないよう、引っ張っていた縄の締め直し。全部を確認すため、思った以上に時間が。
 終わる頃、空からポツポツ雨。慌てて、荷物をひとまとめ。
 帰る途中、用水近くまで行き、振り返ると、低い雲が、ものすごい勢いで、左から右の方へ。
 西の方の空は、もう真っ暗になっていました。
 むーっとするような、暖かい風が吹き、家族が「ちゃー、強い台風やぞ」って。
 案の定、しばらくすると、強い雨風に。家へ着いた時は、みんな、頭からずぶ濡れ。
 少々のことぐらいガマンせねば。そう、「ボランティア」。やれば、きっと、苦労した分、笑顔の稲穂が、たわわに実って。



No.51(323) 「麻のシャツ」   2013(平成25)年3月15日
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 着ると、ちょっと、肌を刺すような感じ。
 生地は、少し、粗めに編んであったようです。
 色は、白やベージュが多く、着ると、涼しく感じたもの。
 サイズは、ゆったりと少し大き目。着ていても、肌にまとわりつかず、サラサラッと。
 洗うと、すぐシワになること。それが、麻製の欠点か。
 だから、アイロンがけが必要で、その分、いくらか手間も。
 今の時期、着るのは、綿製が多いようで、麻のシャツを見かけることは、あまり。
 どんな生地でも、洗濯の効いた物を身につけるのは、気持ちいいもの。気分まで、さっぱりしますから。
 どうやら、着るもので、夏の暑さも違ってくるようです。
 どれだけ違うかは、人によって様々。でも、「ボランティア」。やれば、きっと、熱い思いが、自然に、みんなへ伝わって。



No.50(322) 「ぬり薬」   2013(平成25)年3月14日
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 待ちに待った、祭りの日。
 その日は、屋台が、まるで、道路を覆うぐらい。
 人の肩と肩が、ぶつかるような混み具合です。
 もらった小銭を握りしめ、どれにしようか、キョロキョロ。 向こうから口上が聞こえ、人だかりが。大人の間をかき分け、ちゃっかり一番前へ。
 手にぬると、素手でも、石が割れるぬり薬だとか。まさかと思って見てると、本当に、あの硬い石がまっぷたつ。
 何人か、その薬を買うのを見て、思わず「一つください」。
 家に帰り、同じようにぬり薬をぬり、途中で拾ってきた石を「エイッ」。もちろん、割れるはずがなく、手に痛みだけが。
 時には、我慢しなければならないこともあるようで。
 いえいえ、「ボランティア」。我慢とは無縁の上、やれば、心の痛みも、きっと、どこかへ。



No.49(321) 「電卓」   2013(平成25)年3月13日
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 まとまった計算は、そろばん。
 昔は、それが当たり前。
 電卓が、出始めた時は、びっくりしました。
 何せ、数字のボタンを押しさえすれば、答えを、緑色の数字で表示してくれるのですから。
 初めて買ったのは、価格が、随分安くなってから。
 慣れた人は、数字ボタンを見ずに、片手ですいすいと。
 見てると、それは見事に。それも、5本の指を使ってです。 私の場合、何年かかっても、真似が出来ず、今も、昔と変わらぬ1本指。
 普段使っているのは、足し算だけ。機能からは、もったいない気はするのですが。
 でも、1回だけの計算ではダメ。再計算をして確かめないと、押し間違いがあるようで。
 いえいえ、少々の間違いなんて気にしない。そう、「ボランティア」。やれば、きっと思っていた以上に、得られる何かが。






本波 隆(ほんなみ たかし)

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