『おすそわけ』

本波 隆(ほんなみ たかし)が、1993(平成5)年〜2011(平成23)年まで、情報誌に書いたコラムを、ご紹介します。。。。




No.234 「煮干し」   2008(平成20)年2月1日『福祉くろべ』掲載
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 子どもの頃、朝、トントントンという包丁の音で、目が覚めました。
 そして、プーンと、おつゆのいい匂い。すると、お腹の虫が、グーッ。
 あのおつゆ、だしは煮干しからとったものです。ぐつぐつ煮出して、それはいい味に。
 今、お店へ行くと、いろんな種類の調味料があります。あれは、パッパッと振るだけなので、それは簡単なもの。
 調味料の中には、昆布や魚のエキスが入っているとか。どうりで、おいしいはずです。
 調味料は、手間がかからず、間違いなく便利は便利。でも、煮干しの方に、なんだか味わいがあったような気がします。
 「朝ご飯できたよ、起きられー」の声。今でも、しっかり耳の奥に残っています。
 時には、辛口の言葉が入ってくることが、あるかも知れません。しかし、やらずに言うだけは駄目。
 ボランティア、やれば、きっと心が満足感でいっぱいに



No.233 「セーター」   2008(平成20)年1月1日『福祉くろべ』掲載
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 まずは、古いセーターを、ほどくことから始めました。
 次に、毛糸が元の太さに戻るよう、蒸気をあててふんわりふかふか。
 「手ーっ、出され」。言われて出した両腕に、毛糸の束が。腕を左右に広げ、束から毛糸を一本ずつはずし、丸い玉作りです。
 腕が痛くなったころ、見透かされたように「もうすぐ終わるさかい、我慢しょ」って。  でも、あの時、腕の毛糸の束は、まだまだ残っていたはずです。
 毛糸の玉が、随分大きくなったころ、手元から下へ落とし、遠くの方へコロコロコロ。
 「あれーっ、どこ行くがけ」。せっかく玉にした毛糸は、また広げた腕へ逆戻り。
 毛糸を再利用して作ったセーター、見栄えもなかなかでした。
 ボランティア、見栄えは決してよくないかも知れません。でも、やれば、あのセーターを着たときのように、心がポカポカと。






本波 隆(ほんなみ たかし)

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