『おすそわけ』

本波 隆(ほんなみ たかし)が、1993(平成5)年〜2011(平成23)年まで、情報誌に書いたコラムを、ご紹介します。。。。




No63 「布団」   1996(平成8)年12月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 朝晩、急に寒くなってきました。気がつくと、太陽が沈むのも、随分早くなっています。
 これからの時期は、朝起きる時、布団の中から出るのがつらくてつらくて。
 布団といえば、昔の布団、それは重かったものです。
 それに比べ、今の布団は、軽くて暖かいのですから申し分なし。何せ、羽毛なんてのもあるのですから。
 そうそう、布団の打ち直しを覚えています。昔は、綿を打ち直して使っていたものです。打ち直した綿が届くと、家族が協力して、綿を布団の中へ。
 あの頃は、みんなの心が通いあっていたような気がします。誰かに言われなくても、みんなで助けあいながら。
 さてと、やってみることにしましょうか。ボランティア、やれば、あの時のように、みんなの心が通うかも。



No62 「風呂敷」   1996(平成8)年12月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 最近、風呂敷を使っている人を見かけなくなりました。少し大きな物は、紙袋の中へ入れることが、多くなったようです。
 紙袋は、品物を買うともらえます。そして、もらった紙袋は、大事にとっておけば、何回でも使えます。
 けれども、紙袋には、決まった大きさの物しか入りません。
 その点、風呂敷はどんな形のものでも包めるから便利。なにせ、布一枚で、何でも包めるのですから。昔の人の知恵ってすごいですね。
 今度、心の中の包みを開いてみましょうか。中から取り出すのは、大事にとってあった、思いやりと、優しさを。



No61 「ガマン」   1996(平成8)年12月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 どうして、こんなに忙しいのか、と思うことがあります。
 見ていると、忙しい人の所ほど、仕事がどんどん入ってくるようで、不思議なものです。
 もしかすると、仕事の方で人を選んでいるのかも知れません。この人なら、きっと大丈夫だろうと。
 やることがたくさんあるのは、考えようによっては、幸せなのかも知れません。
 人は生まれながらに、やることが与えられているようです。自分にできることしか降りかかってこないと考えれば、少しは気が楽か。
 他人の忙しいのは百年でもガマンできますが、当人にとっては別。何にしても、あまり度が過ぎるのはいけないようです。
 忘れていませんか、一生懸命やっている人への「ご苦労さま」の一言を。



No60 「初雪」   1996(平成8)年12月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 もう、近くの山の中腹まで、雪が積もっています。
 今年も、雪の心配をしなければならない季節になってきました。雪の準備はまだまだなのに、いやはや。
 雪が降ると嬉しかったのは、子どもの頃までだったような気がします。
 あの頃、初雪が降ると、家の中から外へ飛び出し、両手を広げ空を見上げていた覚えが。なんにでも、素直に感動できた時代でした。それに引きかえ、今は。
 初雪は、もうすぐで、降れば、一面を白く覆い隠してくれます。
 心の中も、せめて年に一回ぐらい、真っ白にできればなどと。



No.59 「遠足」   1996(平成8)年8月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 学校が夏休みになり、家族で外へ出かける機会が増えてきたようです。
 今の家族旅行は、自家用車が多いようですね。車だと、雨の心配がありません。それに、荷物をたくさん積めるし、時間の心配をしなくてもいいので、つい。
 昔の遠足を覚えています。巻きずしや、卵焼きを持ち、自分の足で歩いて行ったものです。おやつだって、今に比べれば、ほんの少しだけ。
 車に乗るなんて、とんでもない。帰りに電車に乗れれば大満足でした。
 あの遠足は、みんなでわいわい言いながら行けたから、楽しかったのでしょう。
 さて、この夏、ボランティアで、新しい思い出作りをしてみるのも。



No.58 「軍手」   1996(平成8)年8月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 畑仕事をする時などは、軍手が重宝です。軍手をしないで作業をすると、爪の中までドロだらけ。
 軍手は、同じものが、左右どちらにも使えるからいいですね。ひっくり返せば、反対の手に合うのですから、あれは便利。
 最近、物をすぐ捨てます。ちょとでも壊れたり破れたりすると、すぐゴミ箱へ。直して使うこと、忘れたのかも知れません。
 捨てずに残せば、使えるものって、たくさんあります。軍手も、片方あれば、ちゃんと役立つのですから。
 最近、誰かの役に立つこと、やったかどうか。考えてみると、誰かの役に立てることって、なかなか、見つからないような気がします。
 さてと、始めてみることにしますか、ボランティア。それが、役に立っても、立たなくても。



No.57 「大きなあくび」   1996(平成8)年8月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 電車に乗っていると、前に座っている人が、あくびをすることがあります。それも、のどの奥まで見えるように、大きな口を開けて、「あーっ、あ」。
 電車に揺られていると、つい眠くなってきます。降りる駅まで時間があり、冷房がきいていると、椅子に座ったとたんウトウト。
 隣の人が、気持ちよさそうに寝ているのは何ともないのですが、寄りかかってこられると。
 まさか、肩で押して起こすわけにはいかないし、悪気がないだけに困ったものです。
 昔の人は、慎みがありました。人前で、それも大きな口を開けて、あくびをするなんて恥ずかしくて。
 人としての常識、忘れたくないものですね。そう、あくびの時は、せめて手を口に。



No.56 「弁当のおかず」   1996(平成8)年8月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 昼の時間、弁当のふたをあけるのが楽しみ。家で作った弁当、お店で買ってきた弁当、旅行の時の駅弁、どれもいいものです。
 弁当の中に、どんなおかずが入っているか、分からない時の方が、わくわくドキドキ。
 外で弁当を食べる時、隣の人と好きなおかずを交換しあうのも、また楽しみでした。
 でも、食べるとき、弁当を作ってくれた人のことを考えることって、あまりありません。一生懸命作ってくれたのに、考えてみれば失礼な話。
 せめて、食事の時の、あいさつぐらいしましょうか。両手を合わせ、大きな声で「いただきます」と「ごちそうさまでした」。



No.55 「よもぎ」   1996(平成8)年5月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 どこを見ても、緑がまぶしいくらい。農家では、田植えもほとんど終わったようです。
 温泉街への道路を走る観光バスの数も、多くなってきました。いよいよ、本格的な春の到来。
 春と言えば、よもぎ。でも、以前ほどよもぎを摘んでいる人を、見かけなくなりました。昔は、家中で摘んでいたものなのですが。
 よもぎで作るだんごは、また格別でした。小さな子供たちにとっては、最高のごちそう。
 新鮮なものを使い、手間暇かけ、家族みんなで作ったから、おいしかったのでしょう。
 家族が協力するって、いいことです。そう、家族でボランティア、今度やってみるのも一案か。



No.54 「反対意見」   1996(平成8)年5月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 立場が変わると、逆のことを言い始める人がいます。それまで賛成と言っていたのに、突然反対を唱える人って、いますよね。
 それなら、どうして最初から反対だと言わないのでしょう。そんな人に限って、立場が変わると、また元に戻るから不思議です。
 一貫性が無いと、信頼を失うことに、まさか、気がついていないなんて。
 反対を言うのは、簡単です。でも、その時の立場だけを考えた反対意見を言う人なら、人間的に、どうでしょう。
 反対意見は無いはずです。みんなで支える、この地域。さてと、どんなボランティアをやるかは、自分自身で。



No.53 「ようかん」   1996(平成8)年5月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 あったかーいお茶には、ようかんが一番。それも、厚く切ったものなら、なお最高。なんてことを言うと、古いと言われる時代のようです。
 若い人たちには、どうやら、ケーキやシュークリームなどの方が人気あるようで。
 ようかんの厚さは、お客さんの人数や、顔ぶれをみて調整できます。大好きなお客さんなら、ちょっと厚目に。嫌いなお客さんだと、他より薄く切って出すことだって。
 ケーキの場合、そうはいきません。ある人にだけ一個余計に出しても、出された方は食べることができなはずです。
 よその家を訪ねた時、どんなようかんを出してもらったでしょう。あれは、確か、隣にいた人より、小さかったような。
 いけません、人間として、幅の厚さ、もっと大きくならねば。



No.52 「鉄びん」   1996(平成8)年5月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 家で、温かいお茶やコーヒーが欲しくなった時、いつでも飲むことができます。ポットがあるおかげでしょうね。
 不意のお客さんにも、すぐお茶を出せるので助かります。考えてみると、あれは便利なもの。
 昔使っていた鉄瓶を覚えています。ふたがチンチンと鳴る音って、いいものでした。
 鉄瓶で沸かした、あつーいお茶の味は、どこか違っていたような気がします。あの鉄瓶、どこへ行ったのでしょう。
 大切にしていたのに、古くなったからと見向きもしない。いけませんね、そんなことでは。
 さてと、ここは、おいしいお茶でも飲んで、じっくり反省を。



No.51 「火吹き竹」   1996(平成8)年2月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 朝起きて、水の中に手を入れると、冷たさが指の先から頭の後ろの方へキーンと。
 最近、炊事は、ガスやボイラーなどのおかげで、楽になりました。料理だって、電子レンジのチーンで、簡単に済ませることが。
 昔、台所からは、包丁の音と、パチパチという薪の燃える音が聞こえていました。
 煙が目に染み、出た涙を拭きながら、竹で、息を吹きかけていたもの。火が消えそうになり、頭が痛くなるまで吹き続けていたことがありましたっけ。
 あの頃は、家族みんなが力を合わせて暮らしていた時代です。だから、子供だって、家のことを手伝うのは当然のこと。ところが、今は。
 さてと、今度、みんなで力を合わせてボランティア、やってみるもの。



No.50 「消雪装置」   1996(平成8)年2月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 雪が降っても、道路には消雪装置があるので助かります。
 ところが、時々道路にたまっている雪混じりの水を、思いっきり飛ばしていく車が。そんな車に出会った時は、いい迷惑です。
 道路にいる人は、あわてて傘を広げ、雪の中へ避難。
 迷惑をかけていることを、知っててやっているのなら言語道断。もし、そんなことにも気がつかないとしたら、とんでもない話。
 車の速度を落とすのは、誰にでもできる簡単なこと。出来ないなんて、言わせません。
 自分に出来る思いやり、それがボランティアの出発点です。ボランティア、まずは、出来ることから一つずつ。



No.49 「ハンカチ」   1996(平成8)年2月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 最近、カラフルでおしゃれなハンカチが多くなりました。中には、ハンカチに使うのがもったいないと思うようなものさえ。
 以前、ハンカチと言えば、白に決まっていたものです。今、白の無地のハンカチは、特別な時にしか使わなくなってきました。
 昔は、ハンカチなんか持たず、手ぬぐいを腰からぶら下げている人を見かけたものです。
 当時、手ぬぐいは、ハンカチの役目もすれば雑巾の代わりにも、そう、きれいに洗ってさえあれば、少しぐらい黒くなっても平気でした。
 物が無いから、考えて使う。物が無いから、大切にする。忘れていたようです、そんな当たり前のことを。



No.48 「救急箱」   1996(平成8)年2月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 指先を切り、ちょっとでも血が出ると、急いで薬やカットバン探し。
 救急箱を置いてある場所ぐらい、分かっていたつもりです。ところが、そんな時に限って、あるはずの場所に見あたりません。
 慌てれば慌てるほど見つからず、大騒ぎ。家の人こそ、いい迷惑です。
 いざという時、何とかなると思うのが普通。でも、時には何とかならないことだって。
 いつもは、じゃまだと思っていても、いざという時、役に立つモノ。そんなモノって、いくつかあります。
 まずは、家の救急箱、置いてある場所と中身を、一度調べておかねば。






本波 隆(ほんなみ たかし)

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