『おすそわけ』

本波 隆(ほんなみ たかし)が、1993(平成5)年〜2011(平成23)年まで、情報誌に書いたコラムを、ご紹介します。。。。




No.31 「へんなか(いろり) 」   1994(平成6)年11月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 朝晩、めっきり寒くなり、鍋のおいしい季節になりました。大勢で、わいわい言いながら箸をのばすのは、楽しいものです。
 三十年ほど前まで、へんなかを使っている家が、まだたくさんあったものです。煙で目をこすりながら、暖かい火の側に。そうそう、座る場所も、ちゃんと決まっていましたっけ。
 夜の楽しみは、ラジオ。時間になると、みんな揃って耳を傾けていました。
 へんなかの暖かい火と、優しい家族。あの頃は、時間がゆっくり流れていた時代です。他人を思いやる心は、今よりあったかも。
 でも、昔の方が良かったなどとは言いません。今を生きてるからこそ、ボランティア。やれば、きっと、何かが。



No.30 「石鹸 」   1994(平成6)年11月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 温かいお風呂に、肩までゆっくりつかっていると、疲れがどこかへ。お風呂って、体の疲れを取るには最高です。
 お風呂に入り、石鹸で体を洗うと、余計すっきり。汚れがとれるのは、気持ちいいものです。
 石鹸は、体の汚れと一緒に、何かを洗い流してくれるようですね。お風呂のおかげで、体と心がすっきりするのは、日本人の知恵かも。
 もし、石鹸で汚れが取れるように、心についた汚れも、何かで取れればいいのに。
 ボランティア。やれば、知らず知らずのうちについた心の汚れが消え、爽やかな気持ちになれるかも。



No.29 「宿題 」   1994(平成6)年11月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 学校で出された宿題を、やっていかず、先生に叱られたことがあります。
 そして、叱られると、すぐに言い訳を。本当は、宿題をやれない理由なんて無いはずなのですが。ましてや、忘れるなんてとんでもない。
  自分が百パーセント悪いのに、屁理屈を言って、何かのせいにしたりするなど、いけませんね。
 大人になると、宿題は出されなくなります。その分、自分で考えて何でもやらねばならないことに。学校のように、これだけやればよいと言われた方が、どれだけ楽なことでしょう。
 確か、もう、忘れていた宿題は無いはずですが。そう、ボランティア以外は。



No.28 「言葉 」   1994(平成6)年11月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 誰かと話をしていて、つい余計なことを口走ることがあります。頭で考えるより先に、口から出てしまい、 言った後で、しまったと反省。
 でも、もうだめ。口から出た言葉って、取り替えることができません。言葉も、何かで消せればいいのですが、それは無理なこと。
 だから、一旦、口にした以上、最後まで自分の責任になってしまいます。
 しまった。と思ったらすぐに「ごめんなさい」。すると、言った方も言われた方も、気分は元へ戻るかも。



No.27 「外出 」   1994(平成6)年8月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 三十年ほど前まで、遠くへ外出するなんてめったにありませんでした。
 あの頃の子供たちは、遠くに出かけなくても、自分たちで遊び場所を探していたものです。それでも、あんな楽しそうに遊んでいました。
 物がなければ自分で作る。遠くへ行くには、自分の足で歩く。そんなことは当たり前で、別に何とも思っていなかったはずなのですが。
 あの人が遠くへ出かけるから我が家も、なんて、ちょっとおかしいかも知れません。
 誰かがやってもやらなくても、関係なし。そう、ボランティア。ほんのちょっぴり、自分の意志さえあれば。



No.26 「返事」   1994(平成6)年8月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 思いがけない人から、手紙を受け取ることが。それが、ワープロ文字でも、嬉しものです。
 手紙は、受け取ると二度も三度も目を通し、読み返せるから、いいのでしょう。
 手紙が届いても、なかなか返事を書くことができないものです。どうせ出すなら早い方がいいのに、ついつい後回し。
 手紙を出した人は、返事の便りを心待ちにしているのが、分かっていてもです。
 さて、将来の自分宛に、ボランティアという名の手紙を出してみましょうか。出せば、きっと、思いもかけなかったような返事が。



No.25 「鏡の中」   1994(平成6)年8月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 鏡を毎日見ていても、自分の細かな変化は、気がつかないものです。自分には分からなくても、久しぶりに会った友人だと、すぐに。
 世の中で、一番見ているはずの自分でさえ、分からないなんて、おもしろいものです。
 世の中、分かったつもりでも、分からないことがたくさん。そのことに、案外、気がついていないだけなのかも知れませんね。
 もし、部屋に自分の心を写す鏡があっても、自信を持って鏡の前に立てるようになりたいものです。でも、その鏡の前を避けて通るような気がするのですが。
 今度、鏡の前に立ったとき、鏡の中の自分ににっこり。そして、せめて、その日一日、その笑顔を忘れないよう。



No.24 「他人のせい」   1994(平成6)年8月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 良い結果が出たのは、自分の努力があったから。悪いことは、みんな他人のせい。最近、そんな人が増えて来たような気がします。思いやりの心が、薄らいでいるのでしょうか。
 言い逃ればかりしていると、しまいには信用されなくなります。信用は、一旦失うと取り戻すまでが大変。
 誰でも、自分の非は認めたくないものです。でも、どこかで誰かが見ていて、それに気がつかないのは、本人だけだったりして。
 良い結果が出たのは、周りの皆さんのおかげ。悪いことは、自分の努力が足りなかったから。
 そんな風に考えると、世の中違ってくるようです。他人のおかげと、自分の努力は忘れずに。



No.23 「ごちそう」   1994(平成6)年5月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 子供の頃は、お祭りが楽しみだったものです。普段口にできないようなごちそうが、それはたくさん。
 あの時、ごちそうと言っても、おもちと大根やあぶらあげなどの、煮しめ。
 今からすれば、何とも思わないような物ばかり。でも、物のなかった時代の方が、おいしいと感じることが多かったようです。
 時代の流れと物の豊かさが、大切なものを忘れさせたのでしょうか。物に恵まれている今が幸せだと感じるのは、もしかすると勘違いかも。
 ボランティア、勘違いはありません。やって分かるのは、自分が持っていた優しい心。



No.22 「貯金の残高」   1994(平成6)年5月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 お金が貯まると嬉しいものです。タンスの中のお金を見てにっこり、貯金通帳の残高を見て、またにっこり。
 自分が汗して手に入れたお金は、無駄に使いたくないもの。それは、大事に大事にします。
 ところが、思いがけなく手にしたお金は、ついつい無駄遣いを。そんなお金は、額面の何分の一ぐらいにしか感じないから、不思議なものです。
 同じお金でも、使うときの気持ちには、天と地ほどの違いがあるようですね。
 自分のために、お金以外の貯金をしましょうか。そう、ボランティアという名の貯金。利息は、きっと、さわやかな充実感。



No.21 「忙しいですか」   1994(平成6)年5月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 何でこんなに忙しいのか、と思うことが。でも、忙しいと感じるときは、能率的な時間の使い方をしているようです。
 反対に、時間に余裕があるときはダラダラと。
 それは、時間に余裕があるため、安心して気が緩んだから。結局、最後に慌ただしくなるのは、いつもと同じなのですが。
 だったら、最初から一生懸命やればいいのに、どうしてだか、それがなかなか。
 自分から「忙しい、忙しい」と口に出す人がいます。でも、本当に忙しい人は、そんなことを言わないはず。忙しいと口に出せるうちは、まだまだ余裕があるのかも知れません。
 忙しいのは、誰でも同じ。だったら、自分や誰かへの言い訳で、「忙しい」とは言わない方が。



No.20 「上手なあいさつ」   1994(平成6)年5月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 最近、あいさつや公の場での話し方に慣れてない人が増えているらしいと耳にします。周りをみてみると、なるほどと感じることが。
 普段のおつきあいでは、あんなにいい人でも、きちんとしたあいさつが、苦手だったりして。
 言葉遣いだけで、人の評価をされる場合があります。初対面だと、余計そう。
 どうせなら、悪く思われたくないのは、誰でも同じ。たかがあいさつでも、人の印象って、そんなところで決まるのですから。
 上手なあいさつ。まずは、自分から笑顔と大きな声で「こんにちは」。



No.19 「叱る」   1994(平成6)年4月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 人の悪いところは、どうしてあんなによく分かるのでしょう。
 言葉遣い、約束、整理整頓の仕方など、悪い点ならどんなことでも。ところが、自分のことになると、なかなか気がつかないものです。
 叱ることとほめることを比べると、叱ることの方が圧倒的に多く感じます。
 叱る時は、考える前に、口から先へ。ところが、ほめる場合は、ちょっと構えてから。
 でも、「よーやったね」。そんな風に言われると、嬉しくなるのは誰でも同じ。言った方も、言われた方も、心の中がポカポカします。
 ボランティアって、人からほめられなくても、自分が満足できるもののよう。さてと、やってみますか、自分の意志でボランティア。



No.18 「ポケットの数」   1994(平成6)年4月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 着ている服に、ポケットはたくさん。でも、使うのは、いつも同じ場所のポケットだけ。
 そうすると、ポケットの数が多ければ、便利という訳でもなさそうです。デザインは別にして、あっても、使わなければ無駄なこと。
 そうそう、ポケットに入れたのを忘れて、次のシーズンまでそのままに、何てことも。
 さて、小さなポケットを、どこかに作っておきましょうか。中にしまっておくのは、思いやりという、優しい心。



No.17 「雑巾と汚れ」   1994(平成6)年4月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 拭き掃除、雑巾とタオルでは、なんだか掃除の後の、仕上がりが違うようです。
 手縫いの雑巾には、心が込められている分、汚れが落ちるのかも知れません。
 家の中には、タオルがたくさん。ところが、手縫いの雑巾となると、どれだけあるのやら。
 雑巾を縫うために、針と糸を持つ時間ぐらいあるはずなのに、忙しくて忙しくてって。
 拭き掃除、心を込めて縫った雑巾でやれば、もしかすると、心の汚れがいっしょに落ちて、少しはきれいに。



No.16 「スリッパの向き」   1994(平成6)年4月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 よそのお宅を訪問したとき、玄関にはスリッパが。何気なく足を入れ、部屋の中へ。
 帰る時、スリッパ向きは、いつの間にか履きやすい方へ変わっています。
 誰かが家を訪ねてきた時は、逆に気を配ることだって。お茶は上等のもので、お菓子はとっておきの到来物を。
 よその人には気を遣うのに、自分のこととなると、どうしてだかいけません。部屋の前には、脱ぎっぱなしのスリッパ。そして、部屋の整理は、いつも後回し。
 自分のことぐらい、誰かに言われる前にやりたいものなのですが。
 さてと、まずは、自分がぬいだ、スリッパの向きを直すことから始めましょうか。



No.15 「感謝」   1994(平成6)年1月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 喉が渇いたときに飲む水は、どうしてあんなにおいしいのでしょう。
 お金を払って飲む、色や味のついたものより。ただの水の方が、おいしいなんて、考えれば不思議なこと。
 何気ない言葉が、心に響くことがあります。「ありがとう」も、そう。たとえ、家族から言われても、悪い気持ちの人はいないはずです。ましてや、他人からだと、余計嬉しくなるもの。
 心の中で思っていることが分かるのは、本人だけ。どんなに感謝の気持ちが一杯でも、言葉にしないと 相手へ伝わりません。
 なりたいものです。素直に、「ありがとう」と言える人。



No.14 「おしゃれ」   1994(平成6)年1月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 おしゃれを気取っていたのに、自分と同じ物を身につけた人とすれ違い、ちょっ気まずい思いに。悪いことをした訳でもないのに、目をそらして、お互い見ないふり。人間って、おもしろいものです。
 おしゃれとは、誰よりも早く季節を先取りすることだとか。でも、寒い時に我慢をして、コートを着ないことだと思っていたら、それはちょっと違うかも。
 時には、我慢することも必要。しかし、我慢にも限度があるようです。そうすると、やはり、素直が一番。やってみますか。素直な気持ちで、ボランティア。



No.13 「知識と体験」   1994(平成6)年1月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 今は、新聞、テレビ、ラジオ等で様々な情報が得られるようになりました。昔に比べると比較にならないほどたくさん。
 自分には、関係ないことでも、知らず知らずのうちに、頭の中に残っていることがあります。
 反面、忘れてはならないことが、頭の中から消えていたりして。
 もしかすると、便利になった分、何か大切なものを失ってしまったのでしょうか。
 何かを知ることで興味がわき、もっと深く知りたいと感じるようになれば、それは本物の可能性が。
 机上の知識も大切ですが、体験だって貴いもの。どちらが欠けても、いけないようですね。



No.12 「今年の色」   1994(平成6)年1月1日『宇奈月町社会福祉協議会だより』掲載
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 元旦は、見るもの聞くもの全てが、新しく感じられ。おまけに、空気まで清々しく思えるから不思議です。
 昨日までの一日も、元旦も、同じ一日なのにどうしてでしょう。それは、心が、いつもと違う何かを感じているからかも知れません。
 テレビとごろ寝、そして少々のお屠蘇もいいのですが、元気に元旦を迎えられたことへの、感謝の気持ちも忘れずに。
 さて、今年一年、どんな色に染めましょうか。







本波 隆(ほんなみ たかし)

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